「はける靴がほしい」
お客様の切実な願いをかたちに。
お年寄りが転ばないような靴を作って欲しい
会長:
平成5年、老人施設を経営する友人が相談にきました。彼がいうには、施設の床を工夫しても転倒がなくならない。調べると転倒の原因は履物にあるとわかった。だが、子ども用の履物はたくさんあってもお年寄りが施設の中で履く履物というものがどこにも存在しないと。
副会長:
今でこそさまざまな分野で高齢者用品がつくられていますが、22年前には高齢者用という考えがなかったですものね。
会長:
世の中にないものであり、なによりやってみる価値がある。もちろんルームシューズやスリッパしかつくっていない会社が本格的な履物をつくれるのか、という不安はありましたが挑戦しようと決めたんです。
お年寄りの歩行を助けたい
副会長:
最初の取り組みから考えたら、開発期間は2年以上かかりましたよね。高齢者が転倒しないものを、といってもイメージができない、そこがまず大変でした。手探りでシューズをつくって持っていき、意見をお聞きして持ち帰る、改良してまた持って行ってご意見をお聞きする。それを繰り返すなかで、だんだんお年寄りが本当に望んでいる形に近づいていきましたね。
会長:
もちろん私たちだけではできませんから、靴づくりのプロの方よりご指導を受けました。高齢者向けの靴を一から作るためにはプロが関わってくれたことは大きかったと思います。
副会長:
当時はケアシューズがこんな大きな市場になるとは思っていなかったです。ただひたすら、“お年寄りの歩行を助けたい”という一心でしたね。
お年寄りを知ることの大切さを実感
会長:
介護施設に通い続け、約500人ものお年寄りの足を観察し、歩き方を徹底的に調査しました。「お年寄りはつま先から着地して歩くことが多い。靴に適当な反り返りがあれば転倒を防げるのでは」とも気づいた。
副会長:
若い人でも足に合わない靴があるでしょう。高齢になると変形も腫れもあり、片マヒや病気もあって足にさまざまな症状が出るんです。お年寄りを知ることの大切さを実感しました。
会長:
お年寄りは朝夕で5mm〜1cmもサイズが変わる。どうやって対応するかの答えがサイズを1cmピッチにすることでした。余裕をもたせることで、足のむくみや腫れに対応できるんです。
お年寄りの悩みに寄り添うケアシューズ
副会長:
むくみで朝晩で足のサイズが違ってきたりするので、サイズ調整も課題でしたね。ベルトで調整できることはもちろん、中敷を外しても履いてもらえるよう設計しました。
会長:
要望のなかで多かったのが、左右別々のサイズを売って欲しいという声でした。片方が腫れていると足のサイズが左右で違うんですよ。
でも片方だけで販売すると、在庫が残っていくから無理、それが靴業界の常識だった。そんななかで右と左のサイズ違いで売るという非常識なことをしたんです。
「そんなことをしていたら会社がつぶれる」といわれましたが、今考えると非常識なことをやることが、あゆみシューズ開発の大きなカギでした。
副会長:
片方の歩行がイレギュラーの場合は片方だけがすぐ傷むため、片方だけ買い替えることができるようにしたのも大きかったですね。
会長:
当時は黒や茶色ばかりの靴が多かったので、明るい色や柄のニーズもありました。
副会長:
軽くて、明るい色の靴を履くと、皆さん自然と笑顔になったのがとても印象的でした。
お客様の要望に向き合い、ともに育てた『あゆみシューズ』
会長:
改良を何十回も重ねた今思えば、当初は失敗も多く、お客さまにもご迷惑をかけてきました。
副会長:
失敗を重ね、怒られながら、成長してきたと思います。
会長:
お客さまとの距離をつないでくれるアンケートはがきも有難い存在ですね。1日数十通、1年間で2万通が届いています。
有難い言葉が多いですが、要望やクレームも学びだと思っています。
副会長:
ものづくりをしていて、感謝の言葉を直接いただけるのは嬉しいことです。お役に立っているということが、ものづくりをする意欲になります。
会長:
メーカーに最終ユーザーからお礼状が届くと言うのは、稀有だといわれます。我々が『もの』に込める想い、『こころ』を支える仕組みを評価いただいたのだと思うと嬉しいですよ。
副会長:
今後も感動と元気をプレゼントできるような靴づくりをしていきたいと思います。履きたい、歩きたい、と思っていただける靴をつくっていきたいですね。
会長:
靴を育ててくれたのは、販売店の方であり、実際に使っていただいている方だと思います。その感謝を忘れずに、これからも「歩行をお助けするんだ」という意志を持った靴をつくっていきたいですね。